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とれまがで芋ほり

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08月01日 22時20分

お猿の子から人の子へ Part6

和気あいあいの流れの不自然な中断と、母親の急変した表情の両方に、セラピストは一瞬の戸惑いを覚えた。
正直なところ、「なんて冷たい母親なんだろう」との思いが脳裏をかすめたりもした。

そして、藤田先生と担任にもそうしたように、しつこく問い続けてみようとかとも思った。
しかしフト、これ以上は深追いをすべきではないような気がしてきた。

たしかに母親は、少年が褒められたり認められたりするのを聞いて、とても嬉しかったにちがいない。そのとき、少年と同じくらい表情が柔らかかったのを、セラピストも知っている。
しかし、母親は今、親として、少年のことを良く言うことを拒否している。

その差異に、セラピストは再び母親の悲しみを感じ取り、同時に、責任ある者としての穀然たる覚悟をかいま見たような気がしたのである。
心中、少年のことを誰より認めたやりたいのに、それを堂々と表に出せない立場・状況に追い込まれている……。これほど切ない人がほかに考えられようか。

もちろん、セラピストは母親にももっと楽になってほしいが、それはもう「大きなお世話」なのかもしれない。対社会への母親のいきざまについて、これに意見する資格はセラピストにはない。彼女の人生についてなにも知らないのだ。
母親には母親の「事情」があるにちがいない。

今、セラピストが頼りとするのはただ一つ。つい先刻まで、少年に向けられていた母の優しい素顔である。
セラピストの脳裏から、やっとどうにか、「冷たい母親」との枠組みが消失したようである。

ほんのわずかな時間とはいえ、グダグダと、頭の中のオセンチ虫と対話していたセラピストを我に返らせてくれ、ちょっと気まずくなりかけた面接室の空気を転換してくれたのは、藤田先生だった。
「私、今日の面接で気がついたことがあります。やはり、私たち教員は、子どもの良いところを見つけて、そこを伸ばしてやらなければいけないなと……。東先生のご指導方針がわかりました!」

(まったくをもって、そのように立派な「ご指導方針」はないのですが……)セラピストは心の中で赤面しそうにあったが、かまわず藤田先生は続けた。
そしてこれが、実においしい話だったのである。

「私たちも反省しなければいけません。学校では、毎週職員会議を開いて、この子のことを話し合ってはいるんですが、そこではたいていこの子の問題行動ばかりが取り上げられています。気にはなっていたのですが、どうも問題探しは教員の癖でして……」藤田先生は担任と目を合わせて、バツが悪そうに笑った。
「どこでもそんなもんですよ」セラピストはとりあえず軽く流した。