08月02日 00時53分
その後のこと
二週間後の第三回面接。
スケッチブックと二回分の職員会議のレポートが、約束どおりセラピストに提出された。
藤田先生は、問題を語ることのできない職員会議がいかにみんな窮屈そうであったか、担任とともに笑いながら教えてくれた。
しかし全教員、苦労しつつも毎回一つずつ、少年のよい変化を見つけてくれたことを、誇らしげにセラピストに報告した。
「ある先生が、職員会議をこの方法に変えてはじめてわかったことがあると言います。それは、今までは教員が、実は本当のこの子をしっかり見ていなかったのではないか、そういうことに気がついたと言ってくれたのです。私はもう嬉しくて嬉しくて……」
セラピストも危うくもらい泣きしそうになった。その話の内容ももさることながら、藤田先生がすでに、「少年の問題」を教えにくる役割の人ではなくなっていたからである。
さらに二週間後の第四回面接。
「先生、奇跡が起きてますよ!」
藤田先生は、少年の学校での変化を、職員会議のレポートをもとに、驚きと自慢の表情で教えてくれた。
それは、少年が教師に挨拶をするようになったこと、職員室にやってきて担任の仕事を手伝おうとしたこと、友達と掃除をするようになったこと、授業中、騒ぎを起こさなくなったことなど、実に盛りだくさんである。
正直なところ、セラピストもビックリである。
少年は、藤田先生の報告を照れくさそうに、少し誇らしげに、聞いていた。
そして母親も、やっと、しかし遠慮がちに、家での少年の変化をボソボソと教えてくれるようになった。……少年は母親の顔をじっと見ていた。
ここでセラピストは、この回での面接の終了を提案した。
少し早すぎるかとも思ったが、もともと、少年も母親も嫌々ながらの受診であった。早くこんなところへ来ることから解放させてあげたい。あとは、学校の先生方とだけ会えばすむこと……。
セラピストは、チョットばかし自分の優しさに酔いが回った。が……。
「もう一度来たい……」少年がはにかんだようにつぶやく。
「この子は東先生がとても好きなようですよ」藤田先生がニコニコとフォローする。
セラピストはまた、別の酔いが回ってきたようである。