07月31日 15時39分
第二回面接
面接室には少年が先頭を切って入ってきた。
小脇にスケッチブックを抱えている。
後を追うように母親と藤田先生、そしてもう一人の先生が入ってきた。少年の担任とのこと。
セラピストは担任への挨拶もそこそこに、少年からスケッチブックを受取り、一枚一枚丹念に見せてもらった。
どの絵もモデルの顔の部分はなかったが、からだのラインは綺麗に描かれており、ヘアもしっかり露出し、なかなかの力作と思えた。
セラピストは少年といくつかのやりとりをし、約束どおり一日に二回のシャセイ(射精と写生)を実行してきたことを誉めた。
「お父さんもよく協力してくれましたね」セラピストは母親に話をふった。
しかし、母親は申し訳なさそうに首を横にふった。
藤田先生が話を取った。
「実は、お父さんがその役割を嫌がられましてね。また自分が叱られるとでも思われたのでしょうか……。もっと積極的になってもらわないと……」
藤田先生は「やはり父親も問題」と言いたげだった。
(しまった!父親が課題に乗るとは限らんかったわな……)
セラピストは心のなかで悔やんだが、後の祭りである。
そして、あわてて藤田先生の独演を遮った。
「では、どなたが本を買ったんです?」
セラピストの解いに対し皆の視線が担任に集まり、彼はおもむろに右手を挙げた。
そして本屋でいかに恥ずかしい思いをしたか、本屋のおばちゃんとの情けないやりとりを、臨場感たっぷり、ユーモアをもって教えてくれた。
みんな、心から笑わせてもらった。
そしてこのエピソードにより、当治療が学校側に受け入れられていることを実感して、セラピストはとても嬉しく感じた。
しかし同時に、父親に悪いことをしたと思い、「父親が嫌がったのは経過から見て当然ありえることで、その父親の気持ちを配慮できなかったセラピストがたいへん情けない」ことをみんなに強調した。
幸い、「父親が問題」との枠組みが広がる気配は消失したようである。