07月30日 15時43分
少年は中学生にしては小柄な方で、顔だちは、昔日、甲子園で活躍した三沢高・太田投手のような、ちょっとハーフっぽいイイ男だった。
しかし、かんたんには打ち解けられそうにない雰囲気だったので、少年とのコンタクトの機会は先送りにし、なじみの藤田先生から話を聞いてみることにした。
先生は、電話の時よりも言葉を慎重に選んで、これまでの経過を要約してくれた。
その間、少年はいかにも不愉快そうな表情を浮かべて、顔をそむけ続けた。
母親は恐縮したようにうつむいていた。そして……
難儀なことに、セラピストはこの状況を長々と続けてしまったのである。
セラピストにとって、初回面接で「問題」を聞くのは、本当のところ、まったく愉しくない行為なのである。
もちろん、それを聞くのが治療のスタートだし、それに関心をもつこと(もったフリをすること)がジョイニング(関係づくり)の一部であることを知っている。
辛いのは、少なくともその間は「問題」をはらむ場の空気を積極的には変えられないことだ。
これを急ぎすぎると、来談者に「理解してもらっていない」という感情をもたれやすいからである。