08月15日 00時08分
「食べているときより買っているときのほうが快感?」
「そう!今の自分が壊れるって感じ」
「今の自分を壊したい?」
「そんなふうには思わないんですけど……」
「ひょっとしたら自分のイメージを壊したいんじゃない?」
「イメージ?」
「みっちゃんは、いつも周囲の期待に応える良い子だったでしょう?それがいやだと思うことなかった?」
「あったあった!自由に自分が出せる妹がうらやましかったですもの」
「人間だれしも光と陰が必要。光ばかりじゃしんどいもんね。みっちゃんの過食は陰の演出。みっちゃんは防波堤を崩すことで、無意識的に人間としてのバランスをとろうとしてるんじゃないかな。だって過食はみっちゃんのイメージを壊すに十分じゃない」
「(笑)じゃあ過食はやめないほうがいい?」
「当分は仲良くした方がいいね。だって今はそれしかないんだから。しかしぼくならさらに陰を分散するな」
「陰の分散?」
「他に自分のイメージを覆すような行動レパートリーをもつということさ。パチンコ、マージャン、競馬、お酒、いろいろあるでしょうが」
「おもしろぉい!でもママが気絶してしまいそう」
「万引きやシンナーよりましさ。それに過食と違ってよっぽどのめり込まない限り『病気』のレッテルを貼られなくてすむ」
「さっそく友達に相談します!」
「スポーツカーに乗るのもいいかもよ」
「それって悪乗り。でも私、車買ったんですよ。ローバー・ミニという英国車」
「びっくり!あの車、僕も大好きだよ」
「よかった……。でも本当はね、全然買うつもりなんかなかったんだけど、ついふらふらっと車屋さんにいってね、あんまりしつこくセールスされたものだから、父に相談しますって逃げたんです。ところが、もちろん父がやめろって言ってくれるものと思っていたんだけど、欲しかったら買えって言うんですよ。期待していた防波堤がなくなってついつい買っちゃった。」
それから少女はひとしきり車の話をした。
そして、次は乗ってくるから車を見てくれと言い残し、意気揚々とひきあげていったのである。