08月14日 20時23分
セラピストは再び面接室に帰った。その手には大きなやかんがぶらさがっていた。三人は何事かと少し驚いたように見えた。
セラピストはなにくわぬ顔でそのやかんを両親と少女の間に置き、話題を「先代」に戻し、両親二人で話し合うように指示して退室した。しかしやはり二人の会話は続かない。またおなじみの三角関係に戻った。
セラピストは再びもうひとつのやかんといっしょに面接室に帰った。三人は大いに驚いたように見えた。
やはりセラピストはそれを両親と少女の間に置き、両親二人で話し合うように指示して退室した。しかしやがてまた三角関係に戻った。
セラピストはさらにひとつのやかんをもってきた。三人はあっけにとられた。そしてそれがやはり両親と少女の間に置かれたときである。
少女はおかしさをこらえきれないといったように、からだで笑った。母親も苦笑いした。父親はわざとらしく「先代」の話題に自分から戻した。
母親はそれに応えるかのように、少し大げさに少女に背中を向け、父親に対した。少女はクックッと声を立てて笑った。
さもありなん。今や両親と少女の間には、まるで防波堤のようにやかんが三つ、整然と並べられることになったのである。
両親の会話は続いた。そしてなんと、セラピストも驚いたことに、少女は弁当に箸をつけ始めたではないか!
両親もさぞや驚いたことであろう。食べる少女に注目したいのを必死でこらえつつ会話を続けようとする両親の姿が、なんともほほえましくもあり、ユーモラスでもあった。
つづく