とれまがファイナンス - 第1話「貴女は株アイドルに選ばれました」 - 深田萌絵の目指せ！株アイドル物語

目が点。それまでの人生で、銀行員とはもちろんのこと、東大卒の人間なんて目にしたことすらなかった田舎者の萌絵には、信じられないほどのハイレベ ルなアドバイザーが付いてしまったのである。しかしながら、藤巻健史に初めて出会った土屋賢二が抱いた感想ではないけれど、こんなにダサくて貧乏くさいヤ ツがファンド・マネージャーで、しかも人にトレードを教えようなんて、本当にハゲが毛生え薬を売っているようなものだという不信感を抱いてしまった。そん な私の懐疑心を他所に彼は

「今日から、僕が、貴女が一人前になるまで責任を持って育てましょう」

と私の目を見た。責任感が強い人なのか、番組からたっぷりと報酬を払われているからか、彼は毅然とそう答えた。私はといえば、怖気づいたということもあり、

「は、はあ・・・」
と答えてしまったところ

「返事は、『はい！』と言いなさい！」

と彼は言い放ち、こちとら思わず
「はい！」
と答えてしまった。よもや、言葉遣いまで教育されるとは思わなかったが、彼が私の教育者となったのは確かである。そんなとき、彼は私が読んでいた株雑誌を取り上げてゴミ箱へ投げ捨てた。
「こんな娯楽雑誌を読むな！間違った知識が付いてしまうぞ！」
と怒鳴られ、
「ええ、っでも、プロの話を読まないと…」
としどろもどろに答えると、
「何が、プロだ！彼らは、本当の運用をしたことがあるとでも思っているのか！？ただの雑誌のライターに運用の何が分かるというんだ？読む本くらいは選びたまえ！君はこれから、一人前のトレーダーにならなければならないんだぞ！」
と真剣に私を叱った。