「PBRは株価/純資産で、純資産の何倍の株価が付いているかをあらわします」
「は、はい。一倍でトントンなんですよね?」
「そう。PBRが2倍ということは、純資産の2倍、つまり株価は200円だということです。200円払って株を買って、解散して100円しか返ってこないのにお得な訳無いでしょう!」
「あー、そっか。じゃあ、一株あたり純資産よりも、株価が安い方がお得なんだ!」
「そうです。PBRが一倍以下なら、理論上は会社が解散したときに投資したときよりも多くのお金が返ってくるでしょう」
「そっか、じゃあPBR0.5倍なら投資した2倍のお金が返ってくるわけね」
「まあ、乱暴に言うとそういうことです。まあ、バリュー投資とは、このようにして割安株を見つけて投資していくということです」
「ふーん。でも、それって本当に証明できるの?本当に、みんながそんな指標で買ってるとは思えないんですけど」
「ほう、そうですか」
「だって、皆がそんなに賢いの?投資家みんながみんな、PBRって言葉を知ってるとは思えないもの」
「深田さん、貴女は全ての物事を自分の知能レベルで判断する悪い癖がありますね」
「Tさんは、自分がよく知ってる狭い専門分野のことを、全ての人が当たり前に知ってる社会常識だと思ってませんか!?」
「そんなもの投資をしている人間なら知っているに決まっているだろう!」
「じゃあ、どうやってそれを証明できるんですか?」
「証明?」
「そう、証明して」
キッと、萌絵はT氏の目を睨んだ。これだけバカにされてるんだったら、もう全面戦争に突入するしかない。-これが常識だなんて証明できっこない―このとき、彼女には自信があった。なぜなら、他人が何を考えているかを証明する術なんてものはこの世にないと信じ込んでいたからだった。
「いいですよ。証拠をお見せしましょう」
そう、彼が答えた瞬間に、萌絵は『え?』と思った。
『人間の考えや行動を証明するなんて、どうやって?』
07月14日 10時41分